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日々平穏

二次小説とか日記を気まぐれに書いてみるつもりです。

闇の旅路 12

 「何時まで呆けているつもりだ? いい加減、名前くらいは聞かせて貰いたいものだな」
 現状に理解が追いつかず呆然とするアキトに対して、エヴァンジェリンがそんな言葉を掛けてからすでに10分程の時間が過ぎようとしていた。



 一向に何も答えようとしない為、とりあえず落ち着いて話が出来る場所に移動する。そう言い出したエヴァンジェリンに案内されるがままに歩き続けるアキト。その脳裏には、何度も逃げるという選択肢が鎌首をもたげた。
 しかし、目の前の少女が殺しても死なない事と、自身を簡単に見つけ出した探索能力、この二つがアキトにその選択肢を選ばせる事を戸惑わせていた。
 「着いたぞ」
 究極の二択に挑むかのように頭を悩ませていたアキトだったが、その言葉に反応して慌てて視線をエヴァンジェリンの前方に移す。すると、周りの風景に溶け込むように佇む可愛らしいログハウスがアキトの目に飛び込んできた。
 「私の自宅だが……何だ?」
 連れて来られた場所のあまりの意外さから動きを止めてしまったアキトに、エヴァンジェリンは溜め息交じりの声を上げた。
 「何をそんなに驚いている。落ち着いて話がしたいといった手前、そうそうおかしな場所になど連れては来ん」
 心外な、という表情を浮かべながら、エヴァンジェリンは玄関の扉を開く。
 それに合わせてアキトが警戒するように身を固くさせたが、扉に備え付けられたカウベルが軽快な音を響かせた以外、これといって目立った変化は何もなかった。
 「警戒心を持つ事は悪いとは言わんが、とりあえずとっとと中へ入れ。何時までもこんなところに立っているのはアホらしい」
 虎穴に入らずんば虎子を得ず。
 未だエヴァンジェリンがどういう思惑で動いているのか掴みきれていないアキトは、まさしくそのような面持ちでログハウスの扉を潜った。
 「これは、また……」
 今までに自分が経験したあらゆる事象を想定しながら扉を潜ったアキトを出迎えたのは、所狭しと置かれたファンシーなぬいぐるみの山。警戒するのが馬鹿らしくなる程に少女趣味が前面に押し出された部屋だった。
 「人形は私の趣味だ。初対面のお前に如何こう言われる筋合いはない。……とりあえず、気が済んだら二階へ上がれ。和室があるから、そこで話を聞く」
 人形に視線を奪われつつも、アキトはそれとなく部屋内部の罠の有無を確認していた。
 それを見透かされていた事に内心でひやりとしながらも、驚きを押さえ込みつつアキトは言われた通りに、目に入った階段を一段一段ゆっくりと登っていく。
 登った先は一階とは違って落ち着いた佇まいになっており、寝室を兼ねているからか、少し離れた場所にはベッドも配置されていた。
 指定された場所には座らず、この場所でも油断なく罠などが隠されていないか見回していくアキト。バイザーに備えられた各種センサーを使って隈なく調べてみるが、アキトの危惧したようなものは何処にもなかった。
 「なんだ、まだそんな所に突っ立ていたのか。とりあえず、その娘はそっちのベットに寝かせてやれ」
 それほど長い時間を調査に当てていたつもりはなかったのだが、アキト自身が考えているよりも時間が経ってしまっていたのだろう。聞こえてきた声の方向へ振り返ってみると、階段を登って来たエヴァンジェリンが顔を覗かせていた。
 発言の内容からするに、アキトの行動は全てエヴァンジェリンに筒抜けだったようで、その顔には呆れがありありと映し出されている。
 女性の寝室をまじまじと探っていただけに、アキトにしても気まずいところが無くもなかったが、その感情を全て理性で押さえ込む。そして、自身の腕の中で眠りつづけるラピスに視線を向けて、先のエヴァンジェリンの申し出を受けるかどうかを考え始めた。
 (この場所がエヴァンジェリンの自宅ならば、あのベットは、彼女が常日頃から使用している物のはず。他に見当たらない事からもその可能性はかなり高い。ならば、下手な仕掛けがあるとは考えにくい、か)
 そう結論付けたアキトは、僅かな逡巡の後、エヴァンジェリンの申し出を受けることに決めた。なにより、今のままの無理な体勢でラピスの体に負担をかけるのは、アキトにとっても望ましい事ではなかったから。
 しかし、ラピスをベットに横にする際、見落としている不審な点がないか入念なチェックを行う様には、流石のエヴァンジェリンも辟易とした表情を見せていた。
 「気が済んだなら、そこに座れ。茶の一杯くらいは馳走してやる」
 二階へ上がって来る際、襤褸切れに変わった服を着替えたエヴァンジェリンは、一緒に持って来たミネラルウォーターを囲炉裏に置かれていた茶釜へと注ぎ、慣れた手付きで水の注がれたそれを炭火の上へと乗せる。そして、湯が適温になるのを待つ間に、座敷の奥から確りと釉薬のかかった黒茶碗、茶杓、茶筅と必要な道具を次々と用意していく。
 「さて、湯が沸くまでにいいかげん名前くらいは聞かせたらどうだ? 言葉は通じているのだろう」
 視線はアキトには向けず、道具を自分が普段使う位置へと揃えながらエヴァンジェリンは問う。
 今までほとんど言葉を発しなかったアキトだったが、いい加減それくらいは伝えなければ話が進まない事は十分に理解していた。
 「テンカワ・アキトだ」
 出来るだけぶっきらぼうを装いながら言い放つアキトに、エヴァンジェリンは満足気な表情を見せる。
 「茶会の席には着いてくれるようだな。なら、さっさと座れ」
 少々、尊大な物言いではあったが、アキトは気にする事なく囲炉裏を挟んだエヴァンジェリンの正面に腰を下ろした。
 それを見届けると、ちょうど良い温度になったらしい湯を茶杓で掬い、見た目からも美しいと感じさせる所作でエヴァンジェリンは茶を点て始める。
 互いに一言も言葉を交わさない静まり返った空間に、茶を点てる独特の音だけが響く。
 始めはゆっくりと、徐々に勢いが増していき、茶碗の中身が多少泡立った所で茶筅の動きがゆっくりと止められた。
 「ほれ」
 出来上がった茶を、エヴァンジェリンは無造作にアキトの前へと突き出す。
 作法などを知らないだろうアキトを考慮して、気にする事なく味わえという意味を込めての行動だった。
 「別に作法など気にするな。普通に飲めば良い」
 何か細工が施されていたとしても、アキトの場合は体内に入った時点で医療用ナノマシンが即座に分解していく。故に、相手を判断する一つ目のポイントと考えて、アキトは茶碗を受け取った。
 何もなければ、当り障りのない内容の会話で探りを入れてみる。毒物の反応があれば、ジャンプで逃げる。
 そう思考を纏めながら、アキトは茶碗の中身を呷った。
 「……美味いな」
 しかし、出てきた言葉は今までの警戒が馬鹿らしくなる程に間抜けなものだった。
 「当たり前だ。日本の文化を学ぶ過程で、茶道もそれなりに修めている」
 自身満々に語るエヴァンジェリンの言葉通り、――当然、毒物の反応などなく――アキトに出された茶はかなりの腕前の物だった。
 こういった本格的な茶を飲む事など今までなかったアキトだったが、素直に感想の言葉が零れてしまった事からもその腕前の高さが容易に窺い知れる。
 「ひと心地着いたところで、少し聞かせろ。何故、麻帆良に侵入した? 学園都市であるこの地への不法侵入は、あまり誉められた行動ではないぞ」
 和んでアキトの警戒心が若干下がったと見越して、エヴァンジェリンは透かさず本題へと話を移す。
 「さてな。俺にもあの場にいた理由は解らん。直前に、発光現象に遭遇した所までは覚えているんだが……」
 「発光現象、ね……。しかし、こんなものを持ち歩かないとならない場所で巻き込まれた現象となると、曰く付きの場所にでも侵入していたのか?」
 相手が見た目通りの少女などではなく、それなりの経験を積んだ存在である事は明白。この駆け引きにどのような受け答えを見せてくれるのか。それを見極める事で、エヴァンジェリンの考えを少しでも掴もうとするアキト。
 しかしこの場では、エヴァンジェリンの方が一枚上手だった。アキトの稚拙な思惑など当然の如く看破しており、背後に隠していたアキトの愛銃を話題に上げる事で、逆にアキトがどう出るのかの反応を楽しみ、さらに表面化するだろう動揺からその精神までも見透かそうとしていた。
 「それにこの銃だが、市販では見かけないタイプだな?」
 銃に詳しいものなら、それが珍しい品だと一目で解る。曰くつきの試作品か、あるいは開発段階で需要が見込めず廃棄された物を趣味で再利用しているのか、など様々な可能性が浮かんでくるはずだ。
 しかし、アキトの目の前にいる少女はそのどの可能性も否定して、手の中に収まるそれは、こことは全く違うどこかで作られた特殊な物なのだろう、と問い掛けているような奇妙な違和感がアキトには感じられた。
 「知人に無理を言って製作して貰った品だ。できるなら、返して貰いたいのだがな」
 だが、感じた違和感を押さえ込み、アキトは勤めて冷静を装いながら誤魔化しの言葉を口にした。
 背中には緊張から、冷や汗がびっしりと吹き出していたが、その事は欠片も表情には出さない。
 「馬鹿を言うなよ。そういう事は、もう少しまともな事を言ってからにしろ」
 「まぁ、その通りだろうな」
 いつまでも、このやり取りに着き合っていたら致命的なミスを起こしてしまう可能性が高い。そう感じたアキトは、情報を得る事など早々に棄却して、一秒でも早くこの会話が終わる事を望んでいた。
 そして、ある意味で期待通りに、アキトの返答を切欠に場が言い様のない微妙な雰囲気に包まれ、静寂が辺りを支配する。
 普通の神経の持ち主なら背筋が凍り付きそうなその状況下で、それを全く気にする事無くアキトは再び茶を啜った。
 特に何かを狙っていた訳ではない。ただ、カラカラに乾いた喉を少しでも潤す事で、僅かでも気分を落ち着かせられればと思ってのことだった。
 そんな常人ならばまず起こさないだろう予想の斜め上を行く行動に、エヴァンジェリンは驚きこそすれ嫌悪等の負の感情は見せない。どちらかといえば、この状況下で己の状態を的確に把握し、精神を落ち着けようとした事に悪くない評価を下していた。
 「面白い男だな、貴様は」
 エヴァンジェリンは、今日初めての自然な笑みを浮かべていた。
 「まぁ、答えたくないなら私は意固地には聞かん。だが、近いうちにこの場所の責任者に面会して貰う事になる。その時は、もう少しマシな言い訳を考えておけ」
 と、そこにエヴァンジェリンの言葉が終わるタイミングを狙ったかのように軽快な電子音が鳴り響いた。
 はて、と考え込むようにエヴァンジェリンは音の発生源を探す。ぐるりと辺りを見回すと、ラピスを寝かせたベットの奥、そこに設置された本棚の上にそれはあった。
 音の発信源である黒い二つ折りタイプの携帯電話は、探していた時間も合わせるとそれなりに鳴り続けているが一向に鳴り止む気配はない。
 仕方なしに立ち上がったエヴァンッジェリンが、鬱陶しそうな表情でそれを手に取り、通話ボタンを押すまでそれは電子音を辺りに撒き散らし続けた。
 「なんだ、じじぃ。久しぶりに楽しい時間を過ごしていたんだ、どうでもいい用件だったら切るぞ」
 そこに冗談ではない雰囲気を感じ取ったのか、エヴァンジェリンの耳元にあてられた携帯電話から、慌てふためく声がアキトの方にまで洩れ聞こえる。
 それに対して、だからどうした、五月蝿い、黙れ、といったような凡そ友好的な会話に使うには不適切な言葉がエヴァンジェリンの口から次々と飛び出す。傍目にも彼女の機嫌が急降下するのが解るだけに、電話越しに直接話している相手の方もどうにか用件を通そうと必死になっているのがアキトにも強く感じられた。
 「鬱陶しい」
 本気でそう思っているのだろう。アキトに対して見せていたものとは真逆の表情を浮かべながら、携帯電話を彼方へと放り投げるエヴァンジェリン。それでも、五分程続けられた会話の流れから察するに用件は拒否できなかったらしく、その内容を仕方なくといった感じにアキトへと伝えた。
 「すまんが、今からここの責任者がお前に会いたいそうだ。どうする? なんなら、無視してもかまわんぞ」
 言いながら口の端を歪めるエヴァンジェリンは、ある意味その意見を推奨している節があった。
 しかし、今先送りにしたところで近いうちに同じ状況になる事は明らか。それが目に見えているだけに、アキトはエヴァンジェリンの薦めを魅力的に感じながらも、断った。
 「遅いか早いかだけだ。俺は、かまわん」
 そう言って立ち上がると、アキトはベットに眠るラピスに近づき、優しくその頬に触れる。
 ひんやりとしたアキトの手に反応してか、むず痒そうなラピスの声があがるが、それだけで起きる気配はない。
 なのでアキトは、ログハウスへ来たときと同じようにその胸にラピスを抱きかかえて移動する事を決める。髪を軽く梳いて整えると、アキトは優しくラピスをその腕で抱え上げた。
 「準備ができたなら行くぞ」
 ここまでの一連の行動を一階に通じる階段付近で見ていたエヴァンジェリンは、先導するように階下へと歩を進める。そんな階下へ降りていくエヴァンジェリンを追いかけるようにアキトも階段へと向かう。ただ、向かいつつもラピスを支えるのと反対側の自由な右手が、左手のコミュニケへとさり気なく伸ばされていた。



 エヴァンジェリンに先導されて歩く麻帆良の町並みは、アキトにとってかなり物珍しいものだった。
 アキトの馴染み深い場所といえば、ネルガルに関係した場所を除くと、――今いる場所より200年近くも未来だというのに――-昭和の日本という雰囲気を醸し出す場所ばかりだったからだ。根幹の記憶にまで遡ってみても、出てくるのは開発途上の火星の姿。それはそれで悪くはないが、即座に思い浮かぶのは何もないだだっ広い原っぱがどこまでも広がっているという原始的な光景だった。
 それ故にか、エヴァンジェリンの姿を視界に残しつつも、知らず知らずの内にアキトの視線は作り込まれた見事な町並みへと向いてしまう。
 「そんなにこの場所が珍しいか?」
 「いや、あまりこういった建築様式に縁がなかっただけだ」
 珍しくて舞い上がっていますと言っているようなものであったが、エヴァンジェリンはその事に触れない。ただ、そうかと言ったきり、口を閉ざしてゆっくりと夜闇の中を進んでいく。
 そんな、物音一つしない静まり返った夜の闇に、アキトの疑問の声が響いた。
 「一つ、聞いてもいいか?」
 「なんだ?」
 「先ほどだが、何故、俺にあんな助言をしたんだ?」
 この上なく怪しいアキトの素性を何ら気にする事もなく、どういう意図があるのか助言までする。
 目の前の少女が何を考えているのか、アキトには全く想像が付かなかった。
 「そんな事か……。聞く必要がなかったから、だろうな」
 侵入者であるアキトの素性を聞く必要がなかった。ありえない解答に、アキトの疑問はさらに深まってゆく。
 「ん? 混乱させたか」
 先ほどまでは、アキトの前を歩いていたのを、ペースを落として横に並ぶように変えながら、エヴァンジェリンはアキトの困惑気味の表情に苦笑を浮かべる。
 「そうだな、あえて言葉にするなら……お前が気に入ったから。それが、一番シックリくるな」
 そう言ってのけるエヴァンジェリンの顔には、年齢に似つかわしくない妖艶な笑みが浮かんでいた。
 ありえない、そうアキトは感じながらも、魅入られたようにその表情に視線を釘付けにされてしまう。
 「失礼な奴だな。今の私の言葉がそんなに意外だったか?」
 「いや、すまない。意外と言えば意外だったが、あからさまに怪しい人物に対しての返答ではないと思ってな」
 虚を突かれた拍子に出てしまったアキトの本音に対して、エヴァンジェリンは確かに、と今度は快活に笑い飛ばす。
 「まぁ、一般的な答えではないだろうな。何故そう思ったか……それは、そのうちお前も気が付くさ」
 アキトの疑問は募るばかりだったが、言うだけ言ってエヴァンジェリンはもう答えるつもりはないと前を向いてしまう。
 アキトにしても、そのような態度を取られては仕方がない。それ以上聞く事が出来ず、黙って歩を進めるしかなかった。
 再び両者が口を閉ざす中を、少々肌寒い風が通り過ぎる。
 麻帆良に体一つで放り出されたアキトは、着の身着のままの状態。つまりは、全身を覆うマントにパイロットスーツも兼ねた黒いボディスーツ、顔にはバイザーといった出で立ち。
 ボディスーツに保温機能等が備え付けられているおかげでそれほど寒さを感じていないが、それは腕に抱えられているラピスまでカバーできるものではなかった。
 マントで厳重に全身を覆い、さらにアキトに密着するように抱きかかえられる事で得られる温もりで寒さを感じないようにしていた。だが、それでも少々足りなかったのだろう。目的地の少し手前で、ラピスは寝ぼけ眼の瞳をゆっくりと開いた。
 「起きたのか、ラピス」
 アキトの顔を、胸の辺り、マントの隙間から覗き込む様に見上げていたラピスの頭がゆっくりと上下動いた。続けてマントから顔を出し、場所を確認する為に左右を見渡すような動きを見せる。その動きの途中、視界の端に見つけた金髪に反応して、ラピスはその正体を探るためにそこからさらに視線を下方へと向けた。
 「誰?」
 「漸く目を覚ましたか? この状況でよく寝ていられるものだな」
 エヴァンジェリンとしては皮肉のつもりだったのだろうが、ラピスにそれは通じなかった。というよりか、ラピスはエヴァンジェリンの言葉など微塵も聞いていない。
 先ほどの問いにしても、ラピスはエヴァンジェリンへ疑問をぶつけたのではなく、アキトへと間近にいる人物の安全性を尋ねていたのだ。故に、視線を向けつつも己に全く反応を見せない事に対して引き攣るエヴァンジェリンが視界にあっても、ラピスは徹頭徹尾、無視を貫く。
 「そいつの事は気にするな。それと、ここは麻帆良だ」
 「解った。これからどうするの?」
 「今は状況の推移に合わせて動く」
 たったこれだけの会話だったが、ラピスは納得したように頷き口を閉ざす。二人にとっては、これだけの会話の中に今の行動に必要なやり取りは全て込められていた。
 だが、体の方はまだ必要としているものがあったようで、抱えられたラピスの腹部が空腹を訴える音を響かせたのだ。最後に食事を摂ったのがかなり前なだけに、意思とは関係なく体がその要求を出すのは当然の帰結だった。
 「お腹すいた」
 これには、さしものアキトも困り果てた。
 アキトがアカツキに頼んで事前に用意していた食料は、全てユーチャリスに保管されている。さらに、ジャンプ事故によって唐突に麻帆良に放り出されたアキトには、手持ちの食料などなかった。どこかに立ち寄ろうにも、このような深夜に開いているような店は周囲には見当たらない。
 それに、もし店があったとしてもこの地で利用できる金銭を持たないアキトにはどうする事もできない。
 自ずとアキトの取り得る手段は限られていた。
 「あいつに連絡は入れてあるから、もう少し待って貰えるか。それに、今は会わなければならない人物もいる」
 あえて固有名詞は出さなかったが、ラピスにはあいつというのがダッシュを指している事は当然理解していた。そして、今が重要な情報収集の時間だという事にも、ラピスは十二分に理解を示す。
 ラピスのそんな聞き分けの良い表情に満足しながら、アキトは横目でエヴァンジェリンの様子も同時に観察していた。
 今し方、他にも仲間が居ると匂わせる会話を態と口にしたのには、彼女がどのような反応をするかを探るという目的も少なからずあった。もし、どこかに連絡を取る素振りでも見せれば、先ほどまでの言動や態度がこちらを騙す為の虚言である事の裏付けが取れる。
 その辺りの反応を期待してのものだったのだが、アキトの期待に反して、エヴァンジェリンは淡々と目的地への道のりを歩きつづけるのみだった。
 「本当に何を考えているやら……」
 今までに経験した事のない理解不能な状況に、さしものアキトもついつい愚痴が零れてしまう。
 そんな珍しい声音に反応してか、ラピスがどうしたのという風に首を傾げて見せる。
 「いや、何でもない。少し考え事をしていただけだ」
 いらぬ心配を掛けまいとして気にするなと左右に首を振るアキトだが、その表情は硬いままで、あまり説得力のあるものではなかった。
 ラピスからすれば、アキトのそのような表情を見て黙っているなどという選択肢はない。なかったのだが、人としての様々な経験の足りないラピスには、どのような言葉をアキトに掛ければいいのか一向に浮かんでこなかった。
 だから、せめて自分にも出来る事をと無い知恵を振り絞った結果、より一層体を密着させた。
 抱き着くように首の後ろに両腕を回し、頬が触れ合う程に顔を近づける。
 「アキト、大丈夫」
 マントから頭だけをひょっこりと出しての行為なだけに、少々滑稽ではあった。だが、それでも申し分ない程にラピスの気持ちはアキトへと届いていた。
 「そうだな。ラピスが傍にいるのだから、一人で悩む必要はないな」
 それを聞いたラピスは、言葉には出さないが、より一層抱きつく腕に力を込める事で自分の拙い気持ちを表現する。
 まだ、自分に出来る事は少ないが、傍にいる事だけは自分にもできる。未発達の心で必死に考え、辿り着いたその答えにアキトが応えてくれた。その事実がラピスの胸の内側に、ほんのりと優しい温もりを与えていた。
 「なぁ、お前達の仲が親密なのはよ~く解った。解ったから、いい加減にして貰えるか」
 アキトとしては、それ程話し込んでいたつもりも、エヴァンジェリンを無視していたつもりもなかった。だが、いつのまにやら仁王立ちするエヴァンジェリンの後方には、今までに見てきた建物とは一線を画する規模の建設物が存在していた。
 「着いたのか?」
 「あぁ、貴様らが話し込んでいるうちになッ!」
 何故か怒りを顕わにするエヴァンジェリンを少々疑問に思いながらも、アキトは前方に聳え立つ建物に視線を送る。
 「かなり大きいな。いったい何の施設だ?」
 「麻帆良学園女子中等部の校舎だ」
 「今、なんと?」
 「だから、麻帆良学園本校女子中等部の校舎だと言ったんだ」
 聞き間違いでない事を確認すると、今度はじっと校舎を探るように眺めるアキト。
 「この土地の責任者に会うのではなかったのか?」
 「何を言っている? ここは麻帆良学園都市だぞ。ならば、ここの責任者と言えばおのずと麻帆良学園の長である、学園長という事になるだろうが」
 この場所が、何かしらの機密を抱える施設、例えるなら研究施設等に類する場所と考えていたアキトからすれば、その驚きは意外に大きかった。
 当然、バイザーに隠れているアキトの瞳は驚きに大きく見開かれている。
 「もしかしてここがどこか解っていなかった、などというオチはないだろうな」
 「……当たり前だ」
 「まぁ、いい。とっとと行くぞ」
 微妙に開いた間に対して、何か言うべきか。そう考えたエヴァンエリンだったが、アキト達が麻帆良に行き着いた経緯を考慮すればこの状況は当然の結果。故に、喉まで出かかった苦言をグッと堪える。それに、アキト達の能力を考えれば、自分にさえ遭遇していなければ問題なくこの世界の情報を手に入れていたはず。その事が容易に想像できるだけに、無能と笑い飛ばす気にもなれなかった。
 「あそこに見えているのが来客用の出入り口だ。あそこには来賓用のスリッパなんかも備え付けられていたはずだから、そこで靴を履き替えて待っていろ」
 そう言って、エヴァンジェリンはアキト達が向かう場所とは逆方向に進んでいく。
 「お前はどこへ?」
 「私は、生徒用のエントランスだ」
 期待通りに呆然となったアキトへ言葉を発する事なくエヴァンジェリンは闇夜を進む。
 先ほど、ラピスにばかり構って蔑ろにされた事に対するささやかな復讐だった。
 アキトからしてみれば、エヴァンジェリンの行為は理不尽なものだったが、エヴァンジェリンからすれば正当なもの。
 狙い通りに事を運ぶのに成功した彼女のその華奢な肩は、下駄箱へと続く扉を潜ってアキトの視界から消えるまで、抑えられぬ笑いの衝動からずっと小刻みに震えていた。
 
 
 
 「学園長室、か……」
 夜の学校という、あまりお世話になりたくない場所を進み続け、階段を幾つか登った先にそれはあった。通り過ぎた廊下にあった教室と思しき扉とはまた違った、重厚な両開きの扉がアキトの目の前に鎮座している。さらにその扉の上部には、ご丁寧にも学園長室と彫られたプレートまで備え付けられていた。
 そんな重厚な扉をエヴァンジェリンは、なんの躊躇いも無く、かつ盛大な音を響かせながら問答無用に開け放つ。
 「じじぃ、入るぞ」
 校舎へ入る直前に、エヴァンジェリンが生徒だと聞いただけにその態度は良いのだろうか、と疑問に思いつつもアキトは後に続く。
 「せめてノックぐらいはして欲しいんじゃがなぁ」
 進んだ先には、見事な白い顎鬚を蓄えた一癖も二癖もありそうな老獪さを感じさせる翁がいた。
 常日頃からエヴァンジェリンは今と変わらない態度を取っているのか、先の言動を気にする事なく翁の視線はゆっくりとアキトとラピスへと向けられる。
 「始めまして。儂がここ、麻帆良学園の学園長を務める近衛近衛門じゃ。早速で悪いんじゃが、学園都市に来た理由を聞かせて貰っても良いかな。儂等としても、生徒の安全を守る為に、不審人物に対しては速やかに対処せねばならんのでな」
 そう言う学園長の口調は穏やかだが、眼を隠すほどに長い眉から見え隠れする眼光は鋭い。その全てを見透かすような眼光に晒されながらも、アキトは目の前の老人から感じる雰囲気から、長きに渡って公私共に世話になったプロスペクターの姿を重ねてしまう。底の見えない不気味さが、本当に良く似ていた。
 「別段、この場所に来た事に理由などない」
 「となると、どうして麻帆良の敷地内へ現れたのじゃ? もしや、とは思うがその少女を誘拐してきて、その逃走中とでも?」
 ずっとアキトの傍らでマントを握って放さない少女、ラピスへと学園長はすっと視線を集中させる。それは、少女に向けるようなものではなく、かなりの威圧感を含んでいた。
 「――ッ」
 そんなものに無防備に晒されたラピスは、湧き上がった恐怖心からアキトのマントを握っていた手にさらに強く力を込めてしまう。
 その拍子に微かに引かれたマントの感覚から、そんなラピスの内心に逸早く気付いたアキトは、ラピスを守るように己の背の後ろに隠した。
 「この子は、俺の身内だ。見れば解ると思うが、血は繋がっていないがな……」
 アキトの言葉を皮切りに、学園長とアキトの視線が交錯する。
 互いが互いの思惑を見破ろうと、内心の探り合いが引っ切り無しに行われる。
 どちらかが切り出さなければいつまでも続きそうなそれに、埒が明かないと、とりあえずの終止符を打ったのは学園長だった。
 「ふむ。まぁ、その子の態度を見れば誘拐のような事件性を感じないのも事実かの。では、もう一度聞こう。麻帆良にはどんな理由で?」 
 「実際のところ、本当に俺にも解らん。気が付いたらこの子といっしょに森の中で気を失っていた」
 「気を失う前に、何か変わった事、疑問に思った事はなかったかの?」
 「さてな……。何か、光だったか……あたり一面が真っ白になって何も見えなくなった事は覚えている」
 ここまで、共にいるエヴァンジェリンは一度も口を開かない。ただ、学園長室に備え付けられたソファに深々と腰掛けながら、交わされる会話に耳を傾けている。
 しかし、その表情は何かを知っている、そう感じさせる何かがあった。
 「エヴァンジェリン、お主はこの者から多少なりとも話を聞いておるのじゃろ? 何かないかの」
 「私が聞いた話も、貴様が今聞いたものと大差ない。見た目からも、真っ当な世界の住人でない事は明らかだが……それだけだ」
 つまりは、アキトに隠している真実を洗いざらい話させるか、どうにかして記憶でも覗かない限りこれ以上は解らないという事だった。
 エヴァンジェリンも学園長に対して何か隠し事をしているようだったが、それをこの場で聞きだす事は不可能だと、長年の付き合いから学園長は判断していた。
 「手詰まりじゃの。では、お主はこれからどうするつもりなんじゃ?」
 こう聞いてはいるが、学園長にはアキトを学園都市から解放するつもりなどさらさらなかった。
 麻帆良学園都市、その内部に存在する学園長が取りまとめるもう一つのとある組織、それに敵対する勢力は数多に存在する。そのどれかに関与している可能性が僅かでもある限り、学園長がアキトをこのまま放逐するなど出来るはずがない。
 「さて、どうしたものか。少々体の調子が悪くてな。どこに行くにしても、それだけは回復してからが理想的だな」
 「ほぅ、体の調子が悪いと。何か、あったのかの」
 この会話の流れは意図的な物で、両者がそれぞれの思惑の元に進めていた。今は、ややアキト寄りの思惑で進み、それに学園長が追従した形だ。
 「何、気がついてすぐに、そこにいる奴から敵対行動を受けてな。その時の影響で少々、体が重い」
 「まぁ、エヴァンジェリンも警備員という仕事柄仕方なくの事じゃ、多めに見てくれると助かる」
 アキトからすれば、思いの外いい流れだった。今の無一文の状態では、体を休めるにも真っ当な施設を利用する事はできない。それを、学園側の自分を無為に逃したくないという思惑に漬け込む事で、休める場所を用意させようとしていた。
 「話したくない事を無理に聞くことは出来まいて。だが、せめてこちらの不手際に対する詫びくらいは受け取って貰えるかの」
 僅かばかりの黙考の振りをした後、アキトは思惑通りに展開が流れた事に内心でほくそ笑む。もちろん、それが学園長の思惑に沿っている事もアキトは重々理解している。
 だが、何をされようとも自分達に関する情報はこの場所には存在しない。
 その事が、全世界に指名手配されたはずの自分を知らない事などから簡単に予想できるだけに、アキトは強気の姿勢で交渉を纏めに掛かった。
 「何をしてくれるんだ」
 「休める場所と食事の提供というのはどうかの? 今からの時間じゃと交通機関も動いておらんし、ここらには土地柄、ホテルといった宿泊施設も少ないしの。疲れを癒す場所は、お主はともかく、後ろの少女には必要じゃろうて」
 「そうだな、そういう内容なら受けよう。ただし、食事に細工は施すな。薬物や毒物は俺には無意味だ。混入されている事が判明した時点で、それなりの報復を覚悟して貰う」
 「少なくとも、その様な下種な手段は取らぬよ。もし、その様な事が現実にあったなら好きに行動を起こしてくれてかまわんよ。ただし、儂等も全力で対処させて貰うがな」
 アキトもラピスも大抵の毒物なら、体に混入したところで全て体内のナノマシンが分解、除去してしまう。故に、細工が施されていようといまいと問題はない。
 ただ、下手な手は打つなという牽制だった。
 だが、その様な考えは微塵も持っていなかった学園長としては、呆れを通り越してどのような場所から麻帆良へやって来たのか大いに疑問に感じていたが、そこは表に出さずにアキト達へと提供する場所を思案し始める。
 「さて、泊まる場所じゃが、どこがいいかの。学園の保健室、空室になっている教員寮の一室、生徒の合宿用の宿泊施設と選り取りみどりじゃが、どれか希望はあるかの?」
 「どれも却下だ!」
 したり顔で宿泊場所を薦める学園長を、いつの間にかソファからアキトの隣へと場所を移したエヴァンジェリンが、氷の様に冷たい視線で睨みつけていた。
 「却下とは、どういう事かの?」
 「言葉の通りだ。こいつ等は、その何処にも行かん。私が預かる」
 エヴァンジェリンの言葉と視線には、なんとも抗いがたい圧倒的な雰囲気があり、それを直接叩きつけられた学園長は背中に嫌な汗が噴き出すのを感じていた。
 「お主、というのはちと困るのぅ」
 「貴様が考えている程度の監視などコイツには無意味だ。大人しく私の言葉に従え。その方が身のためだぞ」
 自分ならば対処が可能。それとも、ただの興味本位。
 学園長には、エヴァンジェリンの意図している所が今ひとつ掴みきれていなかった。故に、判断しかねてしまい、結果として返事に詰まってしまう。
 「何を迷っている。貴様には迷う事など許されん。ただ黙って頷け」
 「しかしのぅ」
 「気持ち悪い声も出すなッ!」
 不利になると一転。学園長は、情けない声を上げながら弱々しく抗議の声をあげる。それは、先ほどまでの緊迫した雰囲気の中で醸し出していた威厳を盛大にぶち壊していた。
 ある意味で、これこそが学園長の本性なのだが、目の前で繰り広げられる幼女と老人の口論はアキトから見ると異様なシュールさがあった。
 「構わん、行くぞ。じじぃの許可など必要ない」
 のらりくらりと答えをはぐらかし続ける学園長に、我慢の限界に達したエヴァンジェリンは、荒々しい口調で言い放つと踵を返して扉へと向かう。
 その手には、アキトのマントが掴まれており、引き摺られる形でアキトも共に扉の方へと連行される。
 「俺は構わんが、本当に良かったのか? 仮にも、奴はお前の上役なのだろう?」
 今までのやり取りからは疑わしい事実だったが、肩書き上は学園長がこの場のトップなのだ。つまりは、エヴァンジェリンはあの翁に従わなければならない立場のはず。恐らくは、その見解で合っているはずだとアキトは思っていた。かなり、疑わしげではあったが。
 「気にするな。確かに奴はここの長ではある。だが、私は奴とはほぼ対等の立場だ。事情があって仕事を請け負ってはいるが、奴の下になった覚えはない」
 「ならば、何も言わんが……。かなり、焦っているな」
 アキトの言葉通り、学園長はエヴァンジェリンの強行な態度に慌てたように腰を上げ、何やら叫んでいた。
 「これッ、待たんか! まだ話は終わっておらんぞ!!」
 しかし、慌ててはいるものの本気で止めるつもりはないのか、その場からは一歩も動こうとしない。どちらかといえば、このハプニングを楽しんでいるようなニュアンスがアキトには感じられた。
 「質が悪いな」
 「じじいは、そういう奴だ。気にしていたら身がもたん」
 そう言って、扉を潜ると喚き散らしていた学園長の声は分厚い壁に遮られ遠いものになった。その結果に満足そうな笑みを浮かべるエヴァンジェリンは、何事もなかったように夜の校舎の中、来た道のりを戻り始める。
 「私もちと、小腹が空いた。さっさと家に戻るぞ」
 アキト達を促し、エヴァンジェリンは足早に中等部の校舎を後にした。
 
 

 「タカミチ、彼をどう見る?」
 「どうでしょうね……。エヴァの言った通り、一般人ではないのでしょうが、詳しいところは解りませんね。名前も聞きそびれちゃいましたし」
 何処からともなく現れ、落ち着きを取り戻した学園長の問いに答えたのは、隙なくスーツを着こなしたタカミチと呼ばれた男だった。
 「おッ! そういえば聞きそびれてしもうた。エヴァンジェリンの奴が、無理やり連れて行ってしもうたからの」
 愉快愉快と笑う学園長に対して、いつもの悪い癖が出てしまったとタカミチは軽い頭痛を感じていた。
 「ですが、彼が魔法使いではない、というのは事実ですか?」
 「ふむ、エヴァンジェリンとの戦闘は覗いていおったんじゃが、あの男が魔法を使った形跡はなかった。確かに、転移魔法のような物は使っておったのじゃが、術式の類は全く確認できんかった。それ以前に、魔法を発動させた痕跡すらなかったからのぅ」
 タカミチの真面目な問いかけに、先ほどとは打って変わって真剣な表情で学園長はアキトとエヴァンジェリンの戦闘を思い起こす。
 「封印されているとはいえ、真祖であるエヴァの奴を魔法を使わないであそこまで痛めつけたのは正直、驚きですね」
 「それも驚きに値するのじゃが、もう一つ気になる点がある」
 「というと?」
 タカミチが学園長室に呼び出され、エヴァンジェリン達の様子を知らされたのは決着が着いた後だった。それ故、結果は知っているが、どのような経過があったかまでは知らない。
 「中盤あたりじゃったかな、エヴァンジェリンの奴は確かに魔法の矢であやつを追い詰めた。じゃが、あの男はそれを何らかの方法でそれを全て防ぎおった」
 「エヴァの魔法の矢を全て、ですか。数はどの程度だったんです?」
 「50近くは放たれておったはずじゃ」
 窺い知れぬアキトの正体に、二人の間に重い沈黙が落ちる。
 そんな沈黙の中、タカミチの心中には、先ほどエヴァンジェリンに押し切られてしまったとはいえ、みすみすアキトを取り逃がしてしまった事への後悔が重く圧し掛かる。
 「やはり、先ほど何も判明していない状態で行かせてしまったのは間違いでしたね」
 「そうじゃな。せめて、記憶を覗く事が出来ておれば、もう少し安心できたんじゃが」
 学園長は、アキトと対面している間、何度もアキトを探る為に記憶を覗こうとしていた。その行為自体は誉められたものではないが、学園長も多くの者の上に立つ立場上、さらに生徒達の安全を考えれば仕方のない行為だった。
 「学園長が覗けない程に強固なプロテクトが掛けられていたとなると、少々厄介ですね」
 真剣に今後の対策を練る必要があるか、と悩み始めるタカミチ。
 対して、学園長はタカミチとは正反対の表情を浮かべていた。
 「いや、プロテクトなどなかったよ」
 「は? では、どうして?」
 驚くタカミチを余所に、ここにきて初めて学園長の表情が曇る。そうなる原因を作った存在への苦悩からか、それとも今後に対する不安からか、学園長の表情からはそのどちらに対しての懸念からそのようになったかは伺い知る事が出来ない。
 「エヴァンジェリンの仕業じゃよ」
 「エヴァ、ですか」
 「うむ。あやつ、儂があの男を探ろうとするたびに、仕掛ける魔法をレジストし続けておったんじゃ。埒が明かんと、とびっきりのやつを使った時には、わざわざあの男の傍に来てそれまで強引に防ぎおったんじゃ。……何を考えておるのやら」
 「あいつにしては、静かに聞いていると思ってましたが、そんな事をしてたんですか」
 その声は、共に呆れを通り越して唖然としたものを含んでいた。
 深まる謎、エヴァンジェリンの不可解な行動。
 疲れきった二人からは、もう溜め息以外何も出てこなかった。
 
 

 学園長等が密談を交わしている頃、アキト達はエヴァンジェリンのログハウスまでの行程の半分辺りに指しかかろうとしていた。
 依然、闇夜に包まれる町は静けさを保っており、行く道に人影はなく、三人の歩く音のみがあたりに反響する。
 「それにしても、やはりというか、全く何も話さなかったな」
 長く艶やかな金髪を靡かせながら、一人先を行くエヴァンジェリンが思い出したかのような口調でアキトへと振り返る。
 「話す必要性を感じなかった」
 「そうか? 使い方によっては、あの死に損ないもそれなりに役に立つんだがな」
 この短い時間で、アキトはエヴァンジェリンに対して腹芸が通じる相手ではないという感想を抱いていた。というよりかは、全てを見透かされているような居心地の悪い感覚を、目の前で苦笑を浮かべる少女から感じていた。
 「そうそう、一つ私からも確認しておきたい事があったんだが、いいか?」
 「何だ」
 「お前の事だが、どう呼べばいい? いつまでも、お前や貴様では不便だろう」
 何を聞かれるのかと肝を冷やしたアキトは、その拍子抜けな質問に呆気に取られてしまう。何より、すでに名は伝えている。名前で呼ばれようと、苗字で呼ばれようと、アキトは別にどちらでも構わなかった。
 「好きに呼べ。別にお前のままでも気にはしない」
 「そうか、ならお言葉に甘えよう、The prince of darkness殿。いや、A級テロリストのテンカワ・アキト殿、と呼んだ方が良かったか?」
 瞬間、辺りの空気が文字通り凍りついた。
 「そんなに怖い目で見るな。お前が好きに呼べと言うからそうさせて貰ったまでだ」
 敵意を剥き出しにしながら睨みつけるアキトに対して、今日一番の笑顔を浮かべながら見つめ返すエヴァンジェリン。
 そのアンバランスな状況は、一触即発の様相を呈しており、アキトに至ってはエヴァンジェリンの次の発言次第では即座に行動に移れるよう、各部の筋肉は引き絞られた弓のように張り詰めた状態になっていた。
 「何故、その名を知っている」
 「安心しろ、ここが実は2200年前後というオチはない。今は西暦2000年で、ここは日本の埼玉県にある麻帆良学園都市だ」
 「あの森で気を失っている間に、俺に何をした!」
 要領を得ないエヴァンジェリンの答えに激昂しながらも、アキトに思い当たる節はそこしかなかった。
 目を覚ました時に脳を探られたような形跡がなかっただけに、知らない技術を行使された可能性が濃厚。それは、自身の体にどのような影響を与えるのか。自分に一体どのような処置が施されたのか、アキトは気が気ではなかった。
 なにより、ラピスに対して何かされていたら。その恐怖が、アキトの精神を蝕む。
 「それを説明するには、まず殺り合った時の事から説明しなければならんな」
 その言葉に、アキトの脳裏に棚上げしていた疑問が再び呼び起こされる。
 戦闘時、未知の氷塊に追い立てられた事と、エヴァンジェリンが死体から甦ってきた事だ。
 「アキト、お前はあの時の氷の矢はいったい何だと思う?」
 「知っていたら、これほど悩んだりしない」
 「だろうな。アレは魔法と呼ばれている物だ。お前は知らんだろうが、世界には魔法技術が存在している。まぁ、表立って知られているのではなく、一応秘匿されているがな」
 「魔法、だと?」
 「そうだ、魔法だ」
 眉唾物の発言にアキトの顔が目に見えて激情に染まる。かと思いきや、意外にも否定の言葉を吐く事なく、逆に一言一句聞き逃すまいと真剣な眼差しでエヴァンジェリンに先を促す。
 実際には否定したい気持もアキトには確かにあったが、そういった不可思議な力でも作用しない限り、つい数時間前に体験した出来事は説明がつかなかった。
 「たいした事はない。例外もあるが、訓練すれば誰でもある程度は使えるようになる技術だ。私が使うものは戦闘に偏ったものが多いが、その種類は多岐に渡る。回復魔法や戦闘補助魔法、気配察知に転移なんてのもある」
 聞きながら、即座にある推測に辿り着いたアキトを気配から察したエヴァンジェリンは、満足そうに頷いて見せた。
 「そうだ、それで正解だ。それだけ様々な種類があるのだ、記憶を探る魔法も当然存在する」
 「それで俺に探りを入れたのか」
 「まぁな。私が使ったのは、記憶を探るものではなく相手が見ている夢を覗き見るものだったがな」
 どちらでもそう変わらないか、と苦笑を見せるその表情は、今までの不敵さが成りを潜め、アキトにも解るほど目に見えて暗い影を落としていた。
 「何を、考えている」
 記憶を見たからには、それをネタに脅しの一つでも飛んでくると警戒していたアキトは、この拍子抜けな展開に戸惑いを隠せないでいた。
 「別に何も。ただ……」
 「ただ?」
 「気が立っていたとはいえ、他人の心を土足で踏みにじる軽率な行動だった……すまない」
 何が何やら。アキトの心情は、まさにそれだった。
 どんな無理難題が飛び出すのか。そう思っていただけに、この急転直下の展開は大いにアキトを混乱させた。
 さらに、詫びの言葉と共に俯くエヴァンジェリンの姿が、アキトの今現在の視界を独占している。
 これすらも、自分達を利用しようと画策する目の前の少女の高度な演技なのか。そんな考えもアキトの脳裏に過ぎったのだが、詫びながら微かに震えるエヴァンジェリンの肩に気が付くと、その考えはあっさりと霧散してしまった。
 「とりあえず、謝罪の言葉は受け取っておこう」
 「そう言って貰えると助かる」
 憑き物が落ちたようなすっきりした表情で答えたエヴァンジェリンは、自分でも驚くほど素直に今の言葉を発していた。軽い微笑を伴いながら。
 「しかし、そうなると余計に解らない。メリットなどないのに、何故俺を助ける」
 少し考えれば解る事だが、自分の正体を知っていたのだから、手を下そうと思えば気を失っていた時に出来たはず。よしんば、何らかの理由があって出来なかったとしても、事ここ今に至るまで何もしてこなかった事や、メリットも無いのに庇うような行動を取った事には疑問が残る。
 ここで、先に聞いた言葉通りに自分を判断している結論付けると全てが腑に落ちのだが、そんな物好きがそうそういるはずが無い。
 アキトはそう判断したのだが、そうなると一層エヴァンジェリンの目的に見当がつかなくなっていた。
 「お前が気に入ったからだ。先ほどここを通った時にも、そう言った筈だが」
 聞いていなかったのか、と首を傾げるエヴァンジェリンに対して、アキトは絶句した。
 未来の技術が欲しいでもなく、実験体になれというでもなく、ただ気に入ったという理由だけ。
 可能性としては考えはしたが、本当にそれだけでテロリストたるテンカワ・アキトを助けたとなると常軌を逸している。
 「テロリストである事を知っていながら、俺を気に入っただと? 正気を疑う発言だな」
 自分を強く卑下する傾向にあるアキトは、殊更に自分を低く見る嫌いが強い。そんなアキトからすれば、血に塗れた殺戮者たる己に対するその様な評価は、信じる信じない以前に、それは信じたくない言葉だった。
 しかし、エヴァンジェリンはその様なアキトの思考などを凌駕する位置から、テンカワ・アキトという存在の本質を見ていた。
 固く閉ざされた、その奥底を。
 「お前がテロリストだという事は、私にとっては些細な事だ。闇に呑み込まれながらも未だ人として足掻き続けている、そのあり方にこそ私は惹かれたのだから」
 尚も言葉を失うアキトに、エヴァンジェリンはゆっくりと彼我の距離を詰める。
 「まぁ、私の見解など今はどうでもいい」
 何処に隠し持っていたのか、エヴァンジェリンは押収していたアキトのリボルバーを突き出した。
 しかし、銃口はアキトへと向けられていない。
 撃つ為ではなく、アキトへと手に持った物を返す為の動作だった。
 「私がいくら言葉を紡ごうとも、テンカワ・アキトという男は信じないだろう? だから、私が信用に足らない存在だと判断するならここで撃て。力の消耗が激しい今なら、私とてただでは済まん。逃げるのには十分な時間が稼げるはずだ」
 その目は真摯で、全く揺らぎがない。
 そんな真直ぐな瞳を見てしまったからだろう。アキトは麻帆良に来てから初めて、目の前の少女に対して酷く興味が湧いてしまっていた。
 そして、ここまでのエヴァンジェリンとのやり取りを振り返ってみた影響か、信頼は当然まだできないが、彼女の言葉は信用はしてみてもいいかもしれないとも思い始めていた。
 「俺を麻帆良に留めて、何がしたいんだ?」
 「私を知って欲しい。そして、私がお前にとって信頼に足る存在に成り得たなら、一つ聞いて貰いたい話がある」
 「見返りは?」
 「魔法技術、世界に関しての情報と、この世界で必要な戦闘技術の供与。他にも必要なら随時交渉を受け付けよう」
 伏せられた内容について、問いただすような無粋な真似をアキトはしない。なにより、それをエヴァンジェリンが今ここで口にするような事はないとアキトも察していた。ただ、最低限、自分へのメリットの確認だけは忘れずに行った所はプロスペクター達の教育の賜物という所だろう。
 「……いいだろう。どのみち拠点や情報収集は必要だった。お前の提案に乗ってみよう」
 あまりに自分達に対しては破格すぎる条件や、都合が良すぎる状況の推移だったが、いつまでも疑っているばかりでは状況は好転しない。騙される可能性を考慮しつつも、何処かで一歩を踏み出す必要があった。その一歩を、アキトは自分をここまで生かし続けた直感に従い、ここで踏み出す事にした。
 「後悔はさせん」
 エヴァンジェリンの左手に握られていた銃を受け取り、腰のホルスターに収めると、さらに差し出されていたエヴァンジェリンの右手を躊躇なく握り返す。
 契約と、和解の意味を込めた握手。
 「契約、完了だな」
 「そうなるな。どれほどになるかは解らんが宜しく頼む、エヴァンジェリン」
 「エヴァでいい。長ったらしく呼ばれるのは性に合わん」
 少し照れたように鼻を鳴らしながら、視線を横に反らすエヴァ。その耳は先まで真っ赤に染まっており、照れているのは一目瞭然だった。
 「なら、ラピス共々改めて宜しく頼む、エヴァ」
 「あぁ、こちらこそな。では、これからの事を詳しく詰める為にも、とっとと家に戻るぞ」
 「了解した。ラピス」
 アキトの背に隠れながら、成り行きを見守っていたラピスにも異論はなく、ただ黙って差し出された左手を取った。



 ラピスが差し出された左手に抱きつくようにしがみ付いたその時だった。
 偶然にも、アキトのコミュニケに体のどこかが触れてしまったのだろう。いつからか、通信状態になっていたコミュニケのウィンドウが開き、そこから恨みがましい少女が突き刺すような視線でアキトを睨みつけていた。
 「酷い! 酷すぎるにも程がありますっ!!」
 AIであるその存在から聞こえてきた声は、器用にも泣き声だった。それに、どうやっているのか、鼻を啜る音まで聞こえている。
 「ようやく連絡が来たと思ったら、回線繋いで会話内容の真偽を確かめろって命令だけ寄越して……。てっきり、それが終わったら労いとか、再開の喜びを祝う言葉くらい貰えるのかと思ったら、ここまでずっと無視! これは、いったいどういう虐待ですか?」
 「うるさいのが来た」
 「五月蝿い? 五月蝿いってなんですか、ラピス! 貴方はず~っとアキトと一緒に居たから良いでしょうけど、私達は一月近く放置されていたんですよ。心細いのを我慢して必死に貴方達の行方を探していた私達に向かって、そんな事言うんですか。アキト、あなたも黙ってないで何とか言ったらどうなんですか!!」
 急に矛先を向けられたアキトだったが、学園長との会話が始まった辺りからコミュニケが受信状態になっていた事は知っていた。だが、まだダッシュの事は伏せて起きたかっただけに、この状況に面食らってしまい掛けるべき言葉が出てこない。
 「ちょっと、聞いてますか。今ならちゃんと誤れば許してあげますから。ほら、私に言わないといけない言葉があるでしょう、アキト」
 全く反応がない事で少々不安になったのか、すでに声は泣き声ではない。中空に浮かんだウィンドウも、反応を見せないアキトを心配してか、アキトに向かって擦り寄って行く。
 「そうだな、蔑ろにしてすまない、ダッシュ。それにサレナも」
 それを合図にピタリと擦り寄るのを止めると、ダッシュは心配気な表情を一転させ、腕組みをしながら出来る限り高飛車に見えるようにしながら続き催促する。
 「あと、無事で何よりだ。お前達とまた会えて嬉しいよ」
 ダッシュの高飛車風の演技もここまでが限界だった。よほどアキト達とはぐれてしまった事が寂しかったのか、その瞳から大粒の涙を流しながら泣き始めてしまう。
 とめどなく溢れてくる涙を、拭う事も忘れてダッシュは泣き続けた。
 しゃくりあげながらも、その口からはアキト達とはぐれてどれだけ寂しかったか、どれほど苦労したかが矢継ぎ早に語られる。
 そんなダッシュに対して、アキトは何を言うでもなく要所要所で相槌を打つのみ。自分に非がある事を自覚しているだけに、この場で浴びせられる罵声は甘んじて受ける覚悟があった。
 それで、ダッシュの機嫌が直るのならアキトにとっては安いものだった。
 「う゛~、まだ言い足りない気がしますが、これ以上続けるとラピスが実力行使に出そうなので、今日はこのくらいにしておきます」
 10分近く思いの丈を垂れ流してみたが、まだまだ言いたい事がある。視線ではそう言いつつも、アキトに甘える声を上げる度に、ラピスから背筋が凍りそうな視線を向けられるのにダッシュは耐え切れなくなっていた。
 「あの、ラピス。なんでそんなに怖い目で私を睨むのですか?」
 指摘されて始めて自分がそんな目でダッシュを見ていた事を知ったのか、ラピスは指摘された表情のまま悩むような仕種を見せた。
 「解らない」
 「解らないんですか?」
 「けど、なんだかここが変な感じがする」
 そう言って、ラピスは自分の胸の辺りをそっと手で抑えた。
 それが嫉妬と呼ばれる感情だという事は、ダッシュには当然の如く気が付いた。
 きっとアキトを独り占めしていた所を、横取りされた事が原因だろう。しかし、それをありのままに伝えるべきかダッシュは迷う。
 今、ラピスの感じた物を言葉で伝えてしまうのは簡単だ。しかし、ここで簡単に伝えてしまうのではなく、ラピスが様々な知識を得た結果、自分で今し方感じた感情が嫉妬と呼ばれるものだと理解する方が、ずっとラピスのためになる。決して、嫉妬からくるストレスの捌け口にされるのが怖かった訳ではない。
 ダッシュは、必死に自分に対してそう言い聞かせながら、どことなく乾いた笑い声を響かせながら視線を右往左往させる。
 そして、どうしよう、どうしようと迷いに迷った結果、
 「あ~っと、そうそう、報告。そう、報告ですよ。アキトに頼まれてたのと、こっちで纏めたのとあるんですが……良いのと悪いの、どっちから聞きたいですか?」
 とりあえず強行突破を選択した。
 

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/06(木) 00:36:12|
  2. 闇の旅路
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

初めまして。
駄文同盟からお邪魔します。
アキト一行がネギま世界に到るまでの背景がしっかりしています。また、文章もなかなか上質で量も申し分ありません。
エヴァと邂逅直後の苛烈な反撃も、アキトの性格を考えると妥当かなと。登場人物の行動は、通して読んだ限りでは理にかなっているとも思いました。
アキトはあくまで裏の世界の人間としてしか生きていけないでしょうから、ネギま世界のある意味緩すぎる空気に染まらないよう祈ってます。いぇ、先の話はエネフェア氏が書くということが前提なので、あくまで希望です。そうだったら良いなぁと。

それでは、失礼します。
  1. 2008/06/04(水) 01:56:29 |
  2. URL |
  3. Ishu #-
  4. [ 編集]

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