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日々平穏

二次小説とか日記を気まぐれに書いてみるつもりです。

闇の旅路 05

 復讐を完遂して幾日か過ぎた。
 アキトの行う事はさして変わらなかった。
 残党を殲滅しつつ、クリムゾンに関する情報を集める。



 そんな変わらぬ日々の繰り返しの中、変わったものを挙げるとしたらそれはアキト自身だろう。
 滲み出る雰囲気は、一見すると以前と同じようだった。
 何も変わっていないかのように見える。
 しかし、何かが違った。
 アキトをよく知るもの以外には解らない僅かなものだったが、確かに違った。
 今までなら絶対に感じさせる事のなかった過去のアキトを感じさせる欠片が、ごく稀に見え隠れするようになったのだ。
 皆には悲しい事に、それが感じられるのはラピスに対する時がほとんどだったが。
 だが己に向けられる事がなくとも、アキトの変化を喜ばしいものと皆が感じていた。
 有り体に言ってしまえば、そのひと時はつかの間の幸福を感じてる瞬間と言えた。
 もしかしたらこの幸福がこれからも続くかもしれない。
 そんなある筈のない幻想を抱いてしまいそうになった時だった。
 遺跡の所在が特定できた、とプロスから報告が入ったのは。
 


 会長室には、アキトと彼の復讐に関わる主要メンバーが集まっていた。
 その面持ちは一様に固い。
 ラピスだけは例外的に、普段と変わらぬ表情だった。
 しかし、それはまだこの様な状況においてどのような表情をすべきなのか理解できていない為。
 皆が難しい顔を見せる中、第一に声を発したのはアカツキだった。

 「みんな集まったし、報告を伝えよう。プロス君頼めるかな」

 声はいつもと同じように聞こえるが、表情はいつもとは違い真剣そのもので、ネルガル会長としてのものになっていた。
 アカツキからの指示に、プロスは解りましたとだけ答える。
 そして、一度全員に視線で確認を取り、皆の了解の意を受け取ると報告内容を話し始めた。
 その内容は、どう反応すべきか判断に困るものであった。
 何故ならば、遺跡が安置されている場所が未だ統合軍本部に隣接する研究施設内だったからだ。
 どうして、統合軍が遺跡を確保しているのか。
 それは火星での事件後、数に物を言わせる形で統合軍がルリ達から接収していたからだった。
 計画ではその後、火星の後継者達の実験データを基にさらなる研究を進めるつもりだったらしいが、次の段階に進める事を可能とする程の人材が存在しなかった為、計画は頓挫。
 イネス並の人材を持たぬ統合軍ではこの結果が目に見えていたので、アキト達からすれば予想通りに事が運んだだけだった。
 だが、問題はここからだった。
 アキト達の予想では、別の場所に厳重に隠匿されるかクリムゾンあたりに協定を持ちかける可能性が高いのではと考えていた。
 だが、結果は予想に反するものだった。
 遺跡の保管場所は計画頓挫後も変わらず同じ場所。
 上層部の判断がどのような物だったかまでは正確な情報は得られなかった。
 だが、警備の状況に関しては計画が実行されていた時期と比べると半分にも満たない規模になっていた。
 それでも、一研究施設に当てられる警備としては規格外と言えたが。
 しかし、有り体に言ってしまえば何処に移されることもなく、ただ警備を多少普通より厳重にしただけというのが第3者視点で見た場合の感想だった。
 これを聞いた皆は、統合軍が遺跡の重要性を未だ理解しえない無能の集団に思えてならなかった。
 事実、遺跡を欲しがる存在など数えだしたらきりがない。
 火星の後継者然り、クリムゾン然り、ネルガル然り……そして、テンカワ・アキトも。
 それらから守ろうと考えるならば、役不足としか言い様がなかったからだ。
 ここまでの内容から解るように、遺跡は統合軍には過ぎた玩具でしかなかった。
 分不相応な物をいつまでも預けておくわけにはいかない。
 それが、この場にいる者達の一致した解答となった。

 「由々しき事態ですな。まだクリムゾンや火星の後継者の手に渡ってはいませんが、いつそうなるか解らない状況です」

 現在の統合軍は、先の火星での反乱の折に離反した部隊と一応は袂を分かつ状態にあり、
 率先して離反した部隊と火星の後継者の残党を逮捕、状況によっては殲滅してはいる。
 けれども、この行動は先の反乱の失態を取り繕っているだけにすぎない。
 未だ木連勢力が強い権力を握る統合軍内部においては、いつまた二つが内部で繋がる事態になってもおかしくない状況にあった。
 そうなる前にアキト達は遺跡を奪取しなければならない。

 「すぐにでも実行に移す」

 事態を理解しているアキトは考えを口にする。
 その言葉が来るのが解っていたかのようにプロスは懐から一枚のディスクを取り出した。

 「これを」

 アキトは黙ってディスクを受け取ると中身が何なのか尋ねた。

 「遺跡が安置されている場所の3Dデータです」

 ディスクの中身をプロスが伝えると、アキトは奇襲かと呟いた。

 「はい、それが一番確実かと。ラピスさんにも少々ご協力いただきたいのですが」

 プロスの立てた作戦は、実に簡単なものだった。
 統合軍と研究所のメインコンピュータにラピスがハッキングを行い内部を混乱させる。
 次いで、混乱に乗じて遺跡の安置されている場所にアキトがジャンプで強襲し内部を制圧。
 制圧後、再びジャンプを行い遺跡を伴なって脱出するというものだった。
 外部に関しては、流石に統合軍本部という事もあって警備はそれなりで、侵入は不可能ではないが容易でもない。
 しかし、遺跡が安置されている場所に関しては警備を行っているのは人間ではなく各種センサーや侵入を防ぐ分厚い扉。
 機械的な守りのみで構成されていた。
 統合軍的には、上層部の限られた人間にしか入れない様にすることによって内部からの犯行をも防ぐ為という事だった。
 罠である可能性も否定出来ないのは重々承知。
 だが、時間的猶予が限られている今、迷っている時間などなかった。
 説明を聞いた後、ラピスはどうするといった感じの視線をアキトに送る。
 それを無言で頷くだけでアキトは返す。

 「わかった、やる」

 アキトの了解を得た、ラピスが答えを返す事で作戦の実行が決定された。

 「こちらの準備は整えてあります。なので、今から一時間後に行動を開始でよろしいでしょうか?」

 そういってプロスはアキトが頷くのを確認して最後の詰めに取り掛かろうとする。
 それを見て、今まで口を挟まなかったイネスが少しいいかしらと準備に取り掛かろうとする皆を止めた。

 「アキト君の体の治療に関して伝えておきたい事があるの」

 その言葉を聞くと皆一様に行動を止め話しに耳を傾ける。
 何故この場面でと思う者もいたが、ここは黙ってイネスの言葉を待つ。
 静まり返った部屋の中でイネスの声だけが響き渡る。

 「まず最初にだけど、アキト君の体内に存在するナノマシンの解析が完了したわ。資料がすべて手に入ったからそう難しい事じゃなかったわ」

 続けて、五感が喪失された根本原因の説明がされ、原因がわかった事による治療法の確立へと続けられた。
 それは、体に対して悪影響を及ぼしているナノマシンの競合によって五感が正確に作用しない状況が引き起こされており、
 このナノマシンをどうにかできればアキトの五感は再び正常に作用するようになるという内容のものだった。
 イネスにしては珍しく単純明快、ストレートな説明が行われた。

 「つまり、体に対して悪性のナノマシンを取り除く事ができれば、五感は回復するということ」

 ここで説明は一度止められて質問はとイネスは一同を見回す。
 出来るだけ理解しやすいようにと配慮された説明だったため現時点での質問はなかった。

 「じゃ、続けるわね。具体的な方法だけど。自己崩壊を促がすナノマシンを開発し、利用しようと思うの」

 その言葉には説明を聞く全員が驚いた表情を垣間見せた。
 それは当然で、今現在アキトの体内にあるナノマシンの量は常人においては致死量である。
 その状態で生きているのは、さまざまな偶然が重なった結果の産物でしかない。
 なのに、そこに更なるナノマシンを投与すると言い出せば驚くのも無理はない。

 「話は最後まで聞くように」

 あきれた表情をしながら注意したイネスは話を続ける。
 最後まで説明を聞くとそれは納得できる内容であった。
 ナノマシンを新たに投与するといってもその量はごく少量で、投与してもアキトの体に対して影響が出ない範囲を計算した上での量との事だった。
 そして、一度にすべてのナノマシンに対して処置を施すのではなく、対象となる物を一つに絞って各個撃破を基本とする。
 ナノマシンの機構も例えるならウイルスのような物で、対象となる物に自己破壊プログラムを伝えそれが連鎖していくという物で、
 体内に同種類の物が存在する限り連鎖を続け、連鎖が止まって2時間経過しても新たな連鎖反応がなかった場合に限り一斉に自己崩壊して体外に放出される仕組みになる。

 「わかったかしら? そして、私からもラピスにお願いがあるの。治療に用いるナノマシンのプログラム開発に協力して欲しいのだけど」

 ラピスのプログラミング能力はルリを除けば人類に並ぶものは皆無というほどのもの。
 治療をより完璧かつ安全に行うためには協力は不可欠だった。

 「アキトのため、協力する」

 考えるまでもなく返事は即答だった。

 「ありがとう。こちらの作業はすぐに終わるものじゃないけど頼むわね」

 ラピスにお礼を述べた後、今度はアキトの方に向き直る。

 「治療の方はナノマシンが出来上がり次第、随時行っていくつもりだから遺跡の件が終了したら今後は研究室で治療に専念してもらえるかしら?」
 「体の治療のためだ、かまわない。こちらこそよろしく頼む」

 アキトの返答に満足した表情を見せ後、これで私の話はおしまいとイネスはアカツキの方に視線を送る。
 その視線に頷くことでアカツキは答える。

 「ドクターの話も終わったことだし、遺跡の奪取の準備を始めて貰えるかな。で、集合は一時間後、場所はユーチャリスでいいかな?」

 その指示を聞くと各々が頷き、必要な準備を始める為に会長室を後にする。
 アキトは、必要な装備の準備と動作の点検。
 ラピスは、ハッキングの準備と3Dデータの確認と補強を開始する。
 他もそれぞれに必要な準備を整えていく。
 そして、一時間が過ぎ実行の瞬間が近づいてくる。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/12/13(水) 00:59:49|
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