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日々平穏

二次小説とか日記を気まぐれに書いてみるつもりです。

闇の旅路 06

すべての準備が整った。
アキト達の準備は先の話し合いで決定された通りの時間で完了していた。



 しかし、サポートのためのネルガルSSを統合軍に覚られる事なく配置するのに少々手間取った。
 その為時刻は深夜に近い時間になってしまっていた。
 ユーチャリスのブリッジではラピスが統合軍にハッキングを行い遺跡の状態を監視し続けている。
 遺跡がそこにある事は間違いなかった。
 準備が全て整った事を再確認したプロスはアキトの方に視線を向ける。
 少し緊張しているのか、珍しい事にアキトはその視線に気がつかず、自分の眼前に表示されたウィンドウを食い入るように見続けていた。
 ウィンドウにはこれから襲撃する遺跡の安置場所が映し出されている。
 ジャンプアウト後どう立ち振る舞うかイメージしているようだ。
 その様子を見たプロスは少し考える素振りを見せた後、アキトに声を掛けた。

 「テンカワさん、準備はよろしいですかな」

 あえて先の行動に関しては何も言わないで、確認だけを行う。
 アキトとて、生半可な鍛えられ方はしていない。
 プロスの声を聞き、自分が思いのほか入れ込んでいた事を自覚する。
 目を瞑り、一度だけ深く深呼吸して不必要な緊張を振り払う。

 「ああ、もう大丈夫だ」

 それを見たプロスから、自分達が鍛え上げた男の成長した姿を嬉しく思う笑みが零れる。
 作戦前という事で、すぐに表情を引き締めるとプロスはアカツキに最終確認を取る。

 「では、作戦を開始しますね」

 一度、ラピスの見るウィンドウに視線を移し遺跡がそこにあることを確認すると、アカツキは頷いて作戦開始の命令を出した。

 「ラピス頼む」

 アキトにそう言われて、ラピスは本格的にハッキングを開始した。
 まず、統合軍のメインコンピューターに時限式のウイルスを設置する。
 指定時刻になると警報が鳴り響くように設定されたものだ。
 続いて研究所の方にも侵入していく。
 こちらにも同じように時限式のウイルスを設置する。
 作動するのは統合軍に設置したものと同じ時刻で、内容はバイオハザードの警報を鳴り響かせるものだった。
 設置が完了すると次は、監視カメラを誤魔化す為のダミー映像の設置準備に取り掛かる。
 ブリッジ内は張り詰めた空気に覆われていた。
 ウイルスの作動時間が近づく。
 あと1分。
 アキトは、ラピスからリンクを通して伝えられるサポートを元にジャンプの準備を、イメージングを完了させる。
プロスも配置したネルガルSSのチームリーダーであるゴートに陽動開始のカウントダウンを伝える。
 
5、4、3、2、1

 瞬間けたたましいまでの警報が両方の施設内に響き渡り、慌てた兵士達が何事かと動き回る。
 研究所では突如鳴り響いたバイオハザードに慌てた研究者達は我先にと施設外やシェルターへ避難していく。
 遺跡の安置場所でも配置された人数の半数近くが事態を把握するためにモニター室から飛び出して行く。
 それを確認した、プロスはラピスに監視カメラの映像をダミーへの差し替えを指示する。
 差し替え完了に合わせてアキトはジャンプした。
 この時、ジャンプで奇襲が行われた事を隠すためボース粒子反応を検知する機器は一時的に麻痺した状態にしていた。
 そのため、奇襲は笑ってしまうほどあっさりと成功してしまった。
 さしたる脅威も存在しない。
 内部に設置されている対人兵器もラピスの支配下にあり沈黙していた。
 人は当然存在せず、中央に鎮座する遺跡だけが静かな存在感を発していた。
 じっと遺跡を見つめる。
 全ての元凶を前に、アキトは何を思うのか。
 その表情は何も感じさせず、氷のように冷たい。
 周りからはゴートが指揮するネルガルSSと統合軍が原因の爆発音が響き渡るなか、遺跡のある周りだけが別世界のごとく無音の空間が広がっているかのようだった。
 そんな中、アキトはおもむろに右手を中空まで上げると、上げた右手で遺跡に触れる。
 右手を触れさせたまま、ジャンプフィールドを展開させてゆく。
 フィールドの展開が完了すると、アキトは遺跡を伴ってユーチャリスの格納庫へとジャンプした。
 ジャンプを確認したブリッジでは、撤収作業が進められる。
 ラピスは、ハッキングの足跡を消しながら自分達を不利にしそうな証拠の隠滅を行う。
 プロスは、ゴート等陽動部隊に作戦成功、撤収開始と指示を送る。
 最後に置き土産とにて犯行が火星の後継者であるように擬装をを施して作戦は終了した。
 格納庫にジャンプアウトしたアキトは、ダッシュの指示によってバッタに固定されいく遺跡を一瞥すると、

 「必ず破壊する」

 そう一言だけ遺跡に向かって言葉を投げかけると、ブリッジへと移動していった。

 「ご苦労様、テンカワ君」

 ブリッジに続く通路の途中でアカツキが待ち構えていた。

 「統合軍が、あれほど無能だとは思わなかった」
 「A級ジャンパーの奇襲はそう簡単に防げるものじゃないよ」

 アキトの辛辣な統合軍に対する批判に、アカツキはやれやれといった感じに答える。
 確かにアカツキ自身も、これほど簡単に事が運ぶのは拍子抜けだとは思っていた。
 だが、ネルガル側が用いた主力二人の能力を同時に防ぐ事はそう簡単な事ではない。
 特に今回のようにピンポイントに狙われれば、防ぐことなど不可能といっても過言ではない。
 そういう考えが脳裏にあった為、こういった結果もありうるとアカツキは思っていた。
 それ故のアキトに対する解答だった。

 「とりあえず、遺跡の奪取は完了したから、以前話した件を実行出来るように進めておくよ」
 「頼む」
 「実行は君の体の治療が終わってからかな。ああ、あとルリ君に会いに行く日取りも考えておいてくれよ」
 「わかった」

 後半の内容を聞くと少々辛そうな表情を見せたが、一度了解を出した件なので渋々ではあったが答える。

 「じゃあ、後の事後処理はこちらでやっておくから、君はラピスを連れて休んでくれて構わないよ」

 そう言い残して、アカツキはユーチャリスを後にした。
 その言葉に感謝しつつ、今日はもう遺跡について考える事は止めにすると、アキトはブリッジへと入っていく。
 後のことをプロスに任せると、アキトはラピスを伴って休む事にした。
 
 
 
 遺跡奪取を終えた日の翌日、目を覚ますと息つく暇もなくアキトはイネスからの呼び出しを受けた。
 遺跡について、もう少し考えを纏めたかったアキトは悪態をつきつつもイネスの元へと赴く。
 そして、イネスの元で伝えられたのは治療のための軟禁生活の始まりの宣言だった。
 誰の差し金か察したアキトは、その人物を思い浮かべつつ冷めた視線を中空に漂わせる。
 その予想は概ね正しかった。
 クリムゾンを落し入れる為の情報もある程度そろった、火星の後継者達の主要施設もあらかた潰した。
 そんな中、アキトが遺跡について考え出してネガティブな思考に陥る事を危惧したアカツキの配慮であった。
 思考が嫌な方向に流れているうちに、気が付けばアキトはベットに拘束されていた。

 「じゃあ、始めるわね」

 いつのまにか準備万端なイネスが、アキトを見下ろしていた。
 その手に、以前話した治療用のナノマシンが入った無針注射を握りながら。
 よく見るとその手は微かに震えていた。
 イネス自身が考案して、結果は成功しかありえないよう計画を立てた。
 失敗など微塵も考えられぬ程に細部を詰めた。
 そこまでしていても実際に治療を始めるとなると嫌な想像が脳裏を掠めたようだ。
 止まってしまったイネスを他所に、先に動いたのはアキトだった。
 信じているという思いを込めた視線をイネスに向けた後、無言で投与しやすいように首元を差し出す。
 その行動を目の当りにしたイネスは、信頼に応えようと脳裏を掠めたモノを振り払うが如く軽く頭を振る。
 深く息を吸い込み、腕の震えを押さえ込むと注射をアキトの首元に添えた。
 一瞬だけ目を瞑って微かに何かを呟くと意を決してナノマシンをアキトに投与した。
 ナノマシンが投与されて数秒もするとアキトはだんだんと視界が暗転していくのを感じながら直前に聞こえたイネスの呟き、
 絶対に成功するという言葉を信じながら意識を手放した。
 アキトが意識を失ってから結果が解るまでの時間は、その場で待つもの達にとって永遠の如く感じられた。
 結果を待つのは、イネスの他にラピスとエリナ。
 時間にすれば3時間程度だったが、その間は誰も声を発する事無くただ経過を示すモニターに全員の意識は釘付けだった。  
 アキトの体の微かな動きにも敏感に反応を示した。
 何時までこの状況が続くのか、もしかしたらもうアキトが目を覚ますのはもうないのだろうか。
 不安が脳裏をよぎる。
 不安に耐えられなくなり苛立つエリナがイネスに声を掛けようと席を立った直後、その変化は訪れた。
 アキトの体からナノマシンの体外放出を知らせる表示がモニターに綴られた。
 だが、まだ安心できない。
 どういう状況なのか聞きたげな表情のエリナを押し留めて、イネスは今回対象としたナノマシンがアキトの体内に残っていないか確認を始めた。
 ラピスも後に続いてそれを手伝い始める。
 緊張からか、イネスの頬を一筋の汗が伝い無機質な床へと落ちて行く。
 表示された確認結果に恐る恐る目を通していく。
 最後まで目を通し、イネスはやっと安堵の溜め息を漏らした。

 「成功ね」

 その言葉には万感の思いが込められいたに違いない。
 そう思わせるように、イネスの瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。
 それからの二週間は怒涛のように流れた。
 イネスとラピスに至ってはほぼ不眠不休といっていい様相で治療に取り組んだ。
 その甲斐あってか、アキトの五感もほとんど本来の機能を取り戻していた。

 「これで、悪性のナノマシンの除去は完了したわ。良性の物に関してはどうする?
  取り除く事は簡単だけど、もしこのままの生活を続けるなら必要になる時もあるかもしれないけど」

 体内に残ったナノマシンは、治療用数種とオペレーター関連だった。
 表の世界に戻るならこれらは必要としないものが大半だった。

 「良性のものはこのままで」

 表の世界に戻る気など毛頭なかったアキトは迷う事無く答えを返した。
 その言葉を少し残念そうな表情で受け取るイネス。
 しかし、予想はしていたのだろう、すぐに表情をいつもの状態に戻して今後の注意事項を伝える。

 「治療はこれで完了したけど、あと一週間くらいは毎日ここに顔を出すようにしてね」

 なにしろ始めての試みだらけだったため、慎重に慎重を重ねるような経過の見守り方だった。
 実際、治療中も平行して体に対する影響を調べていてある一つ以外は問題は起こらず、これ以降も心配はないだろうとされていた。
 ある一つというのも治療中の何らかの副作用なのか、瞳の色が金色に変化してしまったというものだった。
 原因はつかめなかったが体に悪影響はなかった為そのままにされた。
 見解としては、世界で初めての後天的なマシンチャイルド化というのが挙げられた。
 能力検査においても、ルリやラピス程ではないが常人ではありえない処理能力を発揮した事もあり、この意見が有力候補とされた。
 この話を聞いたラピスは瞳の色を見て自分とおそろいと喜びを顕わにし、アカツキはサレナの改良をウリバタケに持ちかけていた。

 「イネス、ありがとう」

 アキトには他に思い浮かぶ言葉がなかった。

 「いいのよ、お兄ちゃんのためだもの。けど、検診にはちゃんと来るようにね」

 最後のこの言葉に苦笑いをしながら了解の意を示すと、
 アカツキに呼び出されていた事を思い出したアキトはもう一度お礼を述べて、研究室を後にした。

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/02/07(水) 02:03:25|
  2. 闇の旅路
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