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日々平穏

二次小説とか日記を気まぐれに書いてみるつもりです。

闇の旅路 02

 月の秘密ドックに到着したユーチャリスからアキトとラピスが降りてくる。
 それを、憮然な面持ちで出迎える女性が一人、腕組みしながら佇んでいた。



 「いつも、急に帰ってくるのね」

 佇んでいた女性、エリナ・キンジョウ・ウォンが少し刺々しい声色で話し始めた。

 「すまない」
 「まあ、いいわ」

 珍しい素直な返答に少し照れたのか視線を少々右にずらしながらエリナは答えた。

 「補給の方はいつも通りでいいわね。サレナとユーチャリスの整備はウリバタケがいるからそっちに回しておくわ」

 淀みない口調で、必要と思われる内容を述べていく。

 「サレナの整備に関しては必要な個所を一応まとめさせてある。それも参考にしてもらうよう伝言を頼む」
 「わかったわ、伝えておく。で、今回の戻ってきた理由は?ただ補給に来た訳じゃないんでしょ」

 アキトを心配するようなニュアンスを微かに感じさせながらエリナは問い掛ける。

 「ああ、遺跡に関する事を話しにな……」

 嫌なことを思い出したのか苦虫を噛み潰したような表情を覗かせる。
 何を思い出したのか察したエリナは、この話題を手早く終わらせようと思い、

 「そう。会長には明日にでも時間を作るように連絡しておくわ」

 とだけ答えると、この話は此処までといった表情をして次の話を始めた。

 「この後はどうするの? イネスの所に顔を出すのは当然として、その後は?」

 言外にそれとなく自分の希望を含ませながらこの後の予定について尋ねてくる。
 それに対して、エリナの言葉に含んだ部分をそれとなく察したのか、

 「ラピスを休ませて、自分も休むつもりだが」

 簡潔に必要な言葉のみ紡いでゆく。

 「そうしなさい。アキト君の体の状態を考えたらそれが一番いいんだから」

 返ってきた答えが満足できるものだったのか、心なし安心したという感じで答える。
 そこまでのやり取りが終わると、今まで沈黙を貫いていたアキトの隣にいた少女が反応をみせる。
 アキトのマントを握る手に力が篭り、それに気が付いたアキトはどうしたのかとラピスに視線を向ける。
 すると、待ち草臥れたのかラピスは少し拗ねたような表情を見せながら言葉を発した。

 「アキト、イネスが待ってる。早く行こう」

 その言葉に逸早く反応したエリナは、ラピスの方に向き直り、

 「ごめんね、ラピス。待たせてしまって」

 と言って、軽くラピスの頭をなでた後、残ってる仕事があるからと言い残して格納庫から去っていった。
 それを見送ると、二人はイネスの元へ向かうため反対側の通路へ移動を始めた。



 秘密ドック内、特にイネスの研究室付近となると人はほとんど存在しない。
 誰もいない通路を数分歩きつづけた後、目的の場所に到着した。
 そこには《イネス秘密研究所》というプレートが扉の上に掲げられていた。
 それにはさしたる反応を見せないで、いつものことといった感じで二人は中に入っていく。
 中に入ると、なかなか検診にやってこない不良患者を出迎えるかのような視線を部屋の入り口に送るイネスの姿があった。

 「遅かったのね。とりあえず体の状況を調べるからそこに横になって頂戴」

 有無を言わせない雰囲気を醸し出すイネスに従ってアキトは検査しやすいように上半身を開けさせて横になる。
 横になったアキトにさまざまな検査用の機器をつけながらイネスは少し怒気を含んだ視線をアキトに向けた。

 「どうした?」

 何故このような視線を送られるのか理解できないアキトは間の抜けた言葉を発した。
 それに対しイネスは、より一層キツイ視線を送る結果になった。

 「わかってるの、お兄ちゃん。お兄ちゃんの体にはまだ多数の未知のナノマシンが休眠状態で混在しているのよ! なのになんで定期的に検診に来てくれないの?
  死の危険性については何とか回避できてはいるけど、いつこの未知のナノマシンが活動を再開して危険な状況に陥るか解らないのよ。」

 自身を心配しての発言と理解しているのか、アキトは何も言えずにただ言われるがままになっていた。

 「すまない、アイちゃん。心配させてしまって」

 ただ、そう言うことしかできないという表情で申し訳なさそうにしている。
 検査のためバイザーを外しており、顕わになっていた焦点を結ばない濁った目がイネスの立っているであろう方向を向いている。
 その視線に気が付き、自分が直前に取った普段の思慮深い行動からは想像できないほどに、かけ離れた言動の数々を思い出したのか、
 イネスの顔が一気に朱色に染まる。
 そして、照れ隠しのためかアキトから向けられる視線から目をそらしつつ咳払いを一つ。

 「解ってくれればいいのよ」

 この雰囲気をどうにかしようと朱色に染まった顔のまま囁くように呟いた後、手に取った検査機器の結果に目を通し始めた。
 検査結果を見つめるイネスの表情は芳しくない。
 その理由は、悪くなっていないが、良くもなっていないという結果のためだった。

 「変わらずか。もう少しだけでも情報があれば……」

 その言葉には、自分の無力感を呪うかのような感情がこめられている。
 自然、検査結果を握る手に力が篭もる。
 しかし、現状では情報が足りないためこれ以上の治療は不可能。
 唯一、アキトに行われた実験の詳細を知るヤマサキ・ヨシオは現在、逃亡中のため情報を聞き出すこともできない。
 そのため、状況はイネスの努力も空しく行き詰まっている。
 このまま、悩んでいても状況を変わらない。
 結果は納得のいくものではなかったが検査自体は終了したので機器を取り外しにかかる。
 検査が終了したのを見たラピスは、ベッドの隅に置かれたバイザーを手にとってアキトの元へ歩み寄った。
 手に持ったバイザーをアキトに渡しつつ、この後どうするのか尋ね始めた。

 「アキト、これからどうするの?」
 「アカツキとは明日会う予定だから、今日はもう休むかな」

  それを聞いたラピスは、懇願するような視線でアキトを見つめながら呟く。
 
 「お風呂」
 「風呂に入りたいのか? なら、エリナかイネスに頼むか」

 水に対する恐怖心が少し和らいだための結果かとアキトは思ったが、ラピスからは違う意味合いの返答がもたらされた。

 「アキトは一緒に入ってくれないの?」
 「いや、それは」

 現在のラピスは出会った当初とは違い、体はもちろんの事、精神や感情面もそれなりに成長してきた。
 なので、最近はエリナかイネスと入浴するようにさせていた。
 それなのに、今回のこの発言。
 男である自分と一緒に入浴する事を止めさせようと考えていたアキトはラピスの発言に少々困惑していた。

 「駄目なの?」

 どうやってこの状況を回避するか考えていると、だんだんとラピスの目元に涙が滲み始めた。
 それを見たアキトは、旗色が悪いと感じイネスへと助けを求める視線を送る。
 しかし、イネスは検診に定期的に来ない仕返しとばかりに無視を決め込み、今までで解っているアキトの体の情報を見直しながら
 他にできる事はないか考えている。
 イネスの援護が受けられないと理解すると、もうほとんど泣く寸前のラピスに溜め息をつきながら向き直った。

 「わかった、一緒に入るよ」

 観念したという風に、ラピスの目尻に溜まった涙を指で掬い取りながら答える。

 「ほんと?」

 まだ不安なのか再度確かめるように尋ねる。

 「ああ、本当だ」

 今度こそ、答えに納得したようですぐにアキトの手を取り、早く行こうとばかりに取った手を引っ張った。
 その行動に、仕方ないなといった表情で付き合うアキトは渋々ながらも立ち上がる。
 立ち上がると、急ぐラピスに少し待つよう諭してイネスに明日のことを伝えるべくその名を呼んだ。

 「イネス、明日遺跡に関して相談したい。時間を空けてもらえるか?」
 「会長室に向かえばいいの?」
 「そうなる」
 「わかった。できる限り資料をまとめておくわ」
 「よろしく頼む」

 簡単に明日のことについてやり取りした後、アキトはラピスを伴って風呂へと向かった。



 翌日、会長室ではアキト、アカツキ、イネスの3人が難しい顔をつき合わせながら遺跡に関しての話し合いが行われていた。

 「で、現状で解っている事をまとめると遺跡の物理的破壊は難しいってことかな?」

 ここまでの説明を聞いた後、重苦しい空気の中アカツキは悔しそうにイネスに尋ねた。

 「そうなるわ。相転移砲を使用したとしても破壊できない可能性が高いわね」

 現状で考えられる最も強力な兵器を用いても破壊不可能という答えに、どうしたものかなという表情になる一同。
 そんな中、アカツキの対面のソファに腰を下ろしていたアキトが何かを考えるような仕種を一瞬だけみせた。
 仕種といっても、ほとんど表情は変わらなかったので気が付いたのは対面のアカツキのみだった。

 「何か案はないかい? テンカワ君」
 「現状ではないな」

 言葉では否定したが、視線では後で話すとアカツキに答えるアキト。
 それに対して、イネスがいては話し辛い内容だと察したアカツキは了解の意を込めた視線で答える。
 そして、3人での話し合いを終わらせるべく行動を開始する。

 「なら、今回の話し合いはここまでかな」

 残念といった感じにアカツキが切り出す。

 「そうね、これ以上話しても無意味ね」
 「そうだな」

 アカツキの発言に賛同するようにイネスとアキトは順番に答える。

 「なら、今回はこれで解散。そうそう、テンカワ君にはサレナに関して少し聞きたい事があるから残って貰えるかな」

 先ほどの視線でやり取りした内容を聞くために適当な理由をつけてイネスのみに退室させようとする。
 それに、疑わしげなところを感じ取ったのか微妙な視線をイネスは向けた。
 しかし、その視線を飄々と受け流すアカツキの態度に、
 自分がいては絶対にその真意は聞き出せないと思ったのか不満そうにだがイネスは退室していった。
 イネスが会長室から十分離れるのを確認して、アカツキは先ほどアキトが何を考えていたのか聞き始めた。

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/11/14(火) 23:54:47|
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