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日々平穏

二次小説とか日記を気まぐれに書いてみるつもりです。

闇の旅路 04

 アカツキ達との話し合いを終えたアキトは、以前にも増して活発に行動を起こしていた。
 火星の後継者の残党の殲滅、クリムゾンの秘匿された研究所の破壊、同じくクリムゾンの関連施設へ潜入しての情報の奪取。
 短期間に多大な功績を上げていた。



 そんな行動を続ける中、今までに集められた情報をイネスと共にまとめにかかっていた時の事、
 珍しい物を発見したという報告がアキトの元に舞い込んだ。
 それは、今までなかなか発見できなかったクリムゾンと火星の後継者、その両方が関与する研究施設だった。
 この報告書に目を通しながら、今までとは一線を隔する気配を漂わせるアキトは、
 やっと復讐対象である最後の一人が見つかるかもしれないという歓喜の表情を浮かべていた。
 しかし、実際のところは何も知らない人間が見れば、その表情を目の当りにしただけで恐怖に引きつるのではないかという雰囲気を醸し出していた。
 そんな状況を気にする事無くイネスはアキトに対して注意を促がした。

 「アキト君、ヤマサキが憎いのは解るけど情報を聞き出すまでは処理してしまわないようにね」

 イネス自身もアキトに行われた実験の数々を思うと生かしておくつもりなど毛頭なかったが、情報は必要なので何とか理性を保つ。
 その言葉を聞いたアキトもなんとか平常心を保とうと努力する。
 そんな中、一人アキトの横で必要な情報の整理を続けていたラピスが手を止める。
 そして、イネスの言葉を聞いて感じた自分がすべき事を話し始めた。

 「アキトが暴走しそうになったら、私が止める。だから心配しないで」

 アキトの手を握りながら、それが自分の役目という意思をリンクを通して伝える。
 ラピスとのリンクのから感じる想いと握られた手の温もりを受けて、アキトは徐々に感情の昂ぶりが落ち着いてくるのを感じた。
 完全に平静な状態に戻ると、アキトはラピスの頭を軽くなでながらありがとうと呟く。
 そして、報告書にもう一度目を通しながら、万全の状態を作り上げるために必要と思われることを考え始めた。
 研究所内部の構造の把握、脱出用の隠し通路の有無、必要な人員の手配等さまざまに思いつく。
 この研究所を襲撃するにあたっては、まず第一にネルガルSSの協力が必須になる。
 なので、まず始めにプロスに連絡を取る事から始めた。
 連絡してからは、時間との勝負になる。
 相手に情報が漏洩したことを悟られる前に襲撃する必要がある。
 プロスもその辺りはプロとして十分理解している部分なので最低でも翌日までに準備を整えると返事が返ってくる。
 そうなると、人員の手配などはプロスが担当することとなり、
 アキト側は研究所の内部構造をラピスに協力してもらい、できる限りの範囲で調べることが急務となる。
 そして、各々の部署があわただしくこのミッションのために動き始める事となった。
 
 
 
 翌日になり、すべての準備が整うとミッション参加者たちがブリーフィングルームに集合した。
 全員が集まったのを確認してゴートが作戦の概要を話し始める。

 「今回のミッションの最大の目的は、ヤマサキ・ヨシオの確保にある」

 ヤマサキの存在の確認に関しては、昨日のアキトの連絡を受けた時点でプロスが指示し得られたものであった。
 この情報を得られた事に関してはまったくの偶然だったとアキトはプロスから聞かされていた。
 事実、プロスの出した指示の最後に可能であれば、という内容が記されている。
 ヤマサキの名が挙がった事で、少し考えるような仕種を見せるアキトを気にしつつも、ゴートはミッションの手順を説明し続けた。
 アキトに関しては事前に役割を通達してあったので、今回のブリーフィングでは全体の動きの確認といった要素が強かった。
 なので、ブリーフィングが終了すると問題なくアキトは所定の位置へと移動を開始した。
 


 今作戦におけるアキトの役割は、脱出用と思われる通路の出口付近での待ち伏せであった。
 内部の作戦では、単独行動を得意とするアキトには不得手な面が多かったためこの様な役割となった。
 けれども、内部で作戦が遂行されればヤマサキと遭遇する確立が一番高いのはこの場所にいるアキトであった。
 無機質な通路に潜入したアキトは、まず始めにこの場所に配置された警備員達を残らず排除する。
 続いて脱出用に用意されたと思われるヘリを操縦不可能な状態にし、自分の出番が回ってくるまで物陰に隠れ気配を消しながらその時を待った。
 内部では作戦が開始されており、夥しい数の銃声が聞こえてきていた。
 稀に、手榴弾の爆発音も混じっている。
 ネルガルSSのもの、研究室に配属されていた警備のもの、双方が混ざり合い混戦の色合いが強くなってきた頃、
 自身の待ち伏せる通路に一つの気配が近づいてくるのアキトは感じた。
 鏡に反射させる形で物陰から伺い、バイザー越しに最初に見えたのは白衣だった。
 それだけで、アキトは自分の心臓の鼓動が跳ね上がるのを感じた。
 次いで顔の確認を行う。
 その間も、心臓は五月蝿い位に鳴り響き、顔にはナノマシンパターンが浮かび続けていた。
 顔を確認する、それは間違いなくヤマサキ・ヨシオのものであった。
 アキトの顔には歓喜のためか、復讐者の歪んだ笑みが張り付いていた。
 やっと、悲願の時が訪れたと喜びに打ち震え、どうやってヤマサキを殺そうかと考えを巡らせる。
 徐々に脱出用のヘリに近づくヤマサキに死角から気配を消したままゆっくりと近づいていくアキト。
 ヤマサキの手がヘリの扉に掛かり表情に少し安堵の色を見せたその瞬間、アキトはヤマサキの後頭部に銃口を突きつけた。

 「久しぶりだな、ヤマサキ・ヨシオ。この瞬間をどれほど待ち望んだことか」

 アキトは追い詰められたヤマサキがどのような反応を見せるか興味を持ち少し待ってみた。

 「え~っと、その声はテンカワ君かな。ほんと、久しぶりだね~、元気だった?」

 この追い詰められた状況においても普段と同じように振舞うヤマサキにどうやれば恐怖を植え付けられるか考えるアキトは、
 まず最初に現状を把握させる事にした。

 「ああ、貴様を殺すために特に今日は万全の体調だ。ちなみに、ヘリの操縦士とここの警備員はすでに俺が処理したから存分に二人での会話を楽しめるぞ」

 銃口を後頭部から側頭部に移し、ヤマサキの表情を覗き込む様に眺める。
 そして、現状を把握した時に少しだけ表情が歪むのを見たアキトは楽しくてたまらないという表情を見せた。

 「で、どうやって死にたいヤマサキ?」

 理性が消え、復讐の感情で心が満たされた瞬間、この様な台詞が口から零れていた。
 しかし、次の瞬間その感情を揺るがす声がアキトの頭の中に響いた。

 (アキト、殺しちゃ駄目。お願い止めて)

 リンクを通して伝わるラピスの声だった。

 (ヤマサキは貴重な情報源。今は我慢して、お願いアキト)

 響くラピスの声と伝わる悲しげな心。
 復讐に彩られている心を何とか押さえるためにと、繰り返し聞こえてくる大切な娘の声に耳を傾ける。
 時間にして、5秒程ではあったが動きを止めたアキトに対して、ここがチャンスとばかりに一縷の望みを持ってヤマサキはヘリのドアを一気に開け放った。
 しかし、その眼前に写ったのは無残に破壊された操縦桿と計器類、真っ赤な華を咲かせながら倒れている操縦士だった。
 それを見たヤマサキはほんの一瞬だが呆然としてしまった。
 そして、呆然とした表情のまま意識失って床に倒れ込む。
 アキトが背後から呆然となったヤマサキの延髄に手刀を叩き込み意識を刈り取った結果だった。
 床に倒れているヤマサキを冷たい眼差しで見下ろしながら、アキトはラピスへリンクで呼びかけて結果の報告をした。

 (ラピス、止めてくれてありがとう。何とか殺さずにすんだ)
 (いいよ、それが私の役目)

 さも当然のように答えるラピスは誇らしげな様子だった。
 それを聞いて軽く苦笑いを見せながらアキトはヤマサキを手錠と手持ちのワイヤーで拘束していった。
 拘束し終わると、報告のためにプロスとの通信を開く。

 「こちらでヤマサキを確保した」

 簡潔に結果だけ報告すると、プロスの方もほとんどの施設が制圧完了していたのか、すぐにこちらに向かってきた。
 ゴートの方は内部で確保したヤマサキの助手達の拘束とこの研究所のホストコンピュータから情報の引き出しに取り掛かっている。

 「ご苦労様です、テンカワさん」

 そう言ったプロスの表情はいつもと変わらない笑顔に見えるが、心なし安心したような感じが見受けられる。

 「プロスさん、情報の聞き出しに同行してもかまいませんか?」
 「あまり見ていて気持ちのいいものではありませんよ」

 暗に、情報を聞き出すためにあらゆる手段を講じるという事をプロスは示唆した。

 「かまわない。あと、必要な情報を聞き出したあとは……」
 「引導はご自分で渡したいと。わかりました」

 では、参りましょうと先を促がすプロスに続いてアキトは研究所を後にした。
 
 

 情報を聞き出す事を得意とする人物達に引き渡した後のヤマサキ達に行われた所業は残酷極まりないものだった。
 しかし、その光景を目の当りにしながらもアキトは眉一つ動かさずにじっとそれらを見続けた。
 大抵の場合が、ここまでの行為を重ねれば情報を明かすと思われていたが、情報の聞き出しは、はっきり言ってあまり芳しい結果とは言えなかった。
 気絶できないように処置した後、可能な限り限界まで苦痛を与えたり、自白剤も投与してみた。
 だが、一番欲しかったアキトの体に関する情報は半分程度しか得られず、残りの遊び半分で行っていたらしい個所に関して曖昧な部分が残ってしまった。
 アキトの治療の為には解らないでは済まされない部分。
 仕方がないので、脳の記憶を司る部分に対して機器を利用して直接情報を取り出す事となった。
 この処置は、必要な情報の保管のためにアキトに対する実験に関与したと思われるこの場にいる研究者達すべてに施された。
 さすがに、脳に記録された情報を直接引き出したためか、アキトの体に関して必要な情報をすべてそろえることができた。
 他にも有益な情報をいくつか得る事ができた。
 そして、アキトにとってはここからが一番重要なところだった。
 すべての情報の聞き出しが終了し、ヤマサキがアキトへと渡された。
 アキトは渡されたヤマサキを防音処理の施された部屋へと放り込むと、動けない状態に拘束し、とある薬を利用して意識を取り戻させた。
 意識取り戻したヤマサキを一瞥すると、簡単には殺さないといった視線を向けながら愛用しているリボルバーの銃口から全ての弾丸を右腕に向かって発砲した。
 着弾した個所は右腕の肘の部分。
 シルバーチップを利用していたためか肘から下が千切れ飛ぶ。
 着弾とほぼ同時に、ヤマサキからは声にならない獣のような叫び声があがっていた。
 叫び声がだんだんと収まってくると今度はアキトに対して助けてくれと壊れたように繰り返すようになる。
 その声を無視してアキトは左腕、右足、左足と順番に四肢に銃弾を撃ち込んでいった。 
 千切れ飛んだ四肢から止まる事なく流れ出る血によって徐々に意識を失っていくヤマサキを冷たい眼差しで見つめる。
 出血多量であと数分で死ぬ事は確実だったが、それに納得できないアキトは更なる銃弾を咽喉と心臓、さらに頭部めがけて放つ。
 咽喉からは血が溢れ、心臓部は抉れて、頭部は吹き飛び脳漿を撒き散らす。
 確実にヤマサキは生命活動を停止ていた。
 けれどもアキトは持ちうる限りすべての弾丸を撃ち尽くすまでヤマサキに対する行為を止める事はなかった。
 アキトが正気を取り戻した時には、ヤマサキは誰だったか判別できない程のただの肉塊に変貌していた。
 周りの壁は一面がどす黒い赤。
 アキト自身も返り血で赤黒く染まっていた。
 そんな中、じっとつい先程までヤマサキだった肉塊に視線を向けながら持っていた銃が手から滑り落ちた。
 床に落ちた銃が乾いた金属音を立てて転がる。

 「やっと終わった」

 呟いた一言には復讐が完了した喜びの感情は込められず、ただただ虚しいといった物だけが込められていた。

 「終わりましたか」

 外で待っていたのか、プロスがゆっくりとアキトの元へ近づいてくる。

 「この後の処理はこちらでやっておきます。今日はもう休んでは?」

 プロスの言葉に頷くだけで返して、アキトはジャンプで月の自室へと向かう。
 その姿を見守りながら、今の胸中を察したかのような眼差しでアキトを見送るプロス。
 その感情は自分も感じたことがある。
 それは、時間でもって解決するか、自分の意志で乗り越えるしかないといった感情が込められているようだった。
 
 
 
 自室に戻ったアキトは何も考えずに返り血の付着した衣服を脱ぎ捨て、頭から少し熱めのシャワーを浴びる。
 排水溝に吸い込まれる夥しい量の赤い水。
 それをアキトはバイザーなしではほとんど視認できるはずのない目で眺め続ける。
 見えてはいなかった、だが感じていた。
 流れるそれは、これからも自分に纏わり続ける罪の証なのだと。
 今、どれだけ洗い流そうとも拭い去る事はできないと。
 大雑把に水気をふき取り、物のほとんど存在しない部屋にある数少ない家具であるベッドに倒れ込むようにして横になる。
 復讐は完了した。
 しかし、戻ってくるものは何もない。
 過去の楽しかったあの日々は2度と戻ってはこない。
 感じるのは虚しい気持ちのみ。
 そんな考えが堂々巡りして、不安と悲しみの感情が心を支配していくように感じていた。
 このまま自分が壊れてしまえばなどと考えた時、部屋の扉の開くのをアキトは感じた。
 入って来たのはラピスだった。
 一歩だけ部屋に踏み込み、アキトのいる方向をじっと見つめる。
 反応を示さないアキトに、意を決したのか小走りで駆け寄って行く。
 ベットの横まで来ると、

 「ずっと一緒」

 そんな言葉を口にしながらおずおずとベットに入って、アキトに抱きつく。
 されるがままになっていたアキトは伝わってくるラピスの温かい心と温もりに少しずつ癒されていくのを感じていた。
 この子を守らなければ、そしてこの子の為に生きる。
 それに、生き続ければもしかしたらまた大切な存在に、肩を並べて生きてゆける存在に再び出会えるかもしれない。
 そんなことを考えながら、復讐を開始してから初めて深い眠りに落ちていく。
 その傍らに、桃色の妖精の温もりを感じながら。

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/11/27(月) 00:30:52|
  2. 闇の旅路
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